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第89話 俺と付き合ってみない?

Auteur: るるね
last update Date de publication: 2026-04-13 00:15:13

「まだ覚えてる? 俺が好きだったあの曲。あの頃、それを聴くたびに、いつもあの人のことを思い出していたんだ。聴けば聴くほど、想えば想うほど――気づけば、その曲そのものまで好きになっていて。今でも時々聴くし、そのたびに、やっぱり思い出してしまう……」

 そう口にしながら、一条はじっと陽菜を見つめていた。その心の奥底まで見透かそうとするように。

 陽菜は、ただ小さく瞬きをしただけだった。

 夜の闇の中では、彼の瞳の奥に押し込められた激しい感情の揺れなど、知る由もなく、ただ無垢に問いかける。

「じゃあ……その人に、会いに行かないんですか?」

 一条はふっと笑った。

「考えなかったわけじゃないよ……。でも、帰国してから知ったんだ。彼女は今でも、ずっと好きだった人を想い続けてる。あれだけ長く想ってきた相手がいるなら、俺の入り込む隙なんてないよ」

 どこか胸を締めつけるような話だった。

 陽菜は一瞬、どう言葉
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